入職の当初においては離職も稀でなく、その後において定着を強めるシステムとして、日本型雇用システムが成立するのであれば、いうまでもなく、この背後には、定着を促進する制度の存在がある。いわゆる年功的な賃金制度や昇進制度、そして退職金や企業年金の制度であり、つまりは転職を不利とする制度である。たとえば平成八年版『労働白書』は、退職金から見た転職コストの存在を非常に印象的に示している。「会社人間」はいかに成立したかここから、このような制度のゆえに個人は特定企業での定着を強いられる結果となるのである、これが「会社人間」としての生き方を強制するのである、といった解釈も生まれうる。
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ゆえに、転職を不利としない制度に改めるべきである、それが特定企業に依存することのない職業生活を可能とするのであり、これが理想としての雇用流動型のシステムである、といった主張が繰り出されることにもなる。確かに現在、契約型の雇用や業績給の導入といった形で、あるいは退職金の「前払い」といった形で、転職を不利としない、あるいは定着を有利としない制度の導入が試みられている。さらに雇用の流動化そのものを目的とした制度の導入も図られている。このような制度変更についての検討は後段に回すことにして、ここでは次のことだけを指摘したい。